埼玉県立がんセンターは、都道府県がん診療連携拠点病院として、地域の高度がん医療とがん研究の中枢機能を担う、がん専門病院です。

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チーム医療の実践|消化器がんキャンサーボード|現代、未来のがん治療はチーム医療で成り立つ

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発言者

消化器がんキャンサーボード

消化器がんキャンサーボード

  • 消化器外科 田中洋一
  • 消化器内科 多田正弘
  • 消化器外科 坂本裕彦
  • 放射線科 齊藤吉弘
  • 消化器外科 西村洋治
  • 消化器内科 有馬美和子
  • 消化器外科 川島吉之
  • 消化器内科 山口研成
  • 消化器内科 石窪 力

消化器キャンサーボードでは20名近くの医師が集まって、各専門分野の知識から症例について議論しています。消化器がんに対して最良の治療を行うため、力を合わせています。

集学的治療による成績向上と、侵襲の軽減を図る

田中
消化器がんにつきましても、治療方針の判断に迷うような患者さんや、他科にわたって治療が必要な患者さんについては、それぞれの医師の経験に基づいて判断するよりも、多くの診療科から医師が集まって検討を行いコンセンサスを得て治療を行うのが一番適切であるという考え方で、これだけの医師が集まって検討を行うカンファレンスを開催しています。
この消化器合同カンファレンスの対象疾患としては食道がん、胃がん、大腸がん、肝胆膵がんなどです。
食道から肛門まで、消化器はトータルで考えなければなりませんから、チームで医療を行う必要があります。全員で検討しておけば、他科との患者さんの受け渡しもスムーズに行きます。また医師だけでなく、栄養サポートチームとの連携も大切です。
がんセンターには、現在の消化器がんの治療法の最先端を開拓してきた、全国的に著名なエキスパートが勢ぞろいしています。
多田
早期胃がんの内視鏡治療は年間200例,食道がんの内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、50-60例行っています。
石窪
大腸は前がん病変を含めると700例、大腸がんに限ると年間100例程度です。
田中
消化器外科の食道がんの手術件数は年間60-70件で、そのうち低侵襲の胸腔鏡手術が9割以上になっています。胸腔鏡手術の症例数としては全国でも5本の指に入りますね。
食道がんの手術には、まず手術を行う場合と、手術前に化学療法を行うケースがあるのですが、現在では、消化器内科にお願いして化学療法を行うほうが多くなってきています。
有馬
食道がんでは,ごく初期のがんは第一選択として内視鏡治療を行うことが,ガイドラインで定められています.しかし,内視鏡治療の適応を決めるには内視鏡診断が重要ですし,診断に関しては施設間の格差が大きいのが現状です.当科では診断に力を入れて診療しています.食道がんの手術は侵襲が大きく,なるべくなら手術を避けたいという患者さんも多いので,少し深いがんに対しても内視鏡治療の適応を拡大する機会が増えています.しかしその場合には,リンパ節転移再発のリスクが高くなりますので,再発をなるべく早期に発見できるように,経過観察の検査が重要となります.内視鏡治療だけでなく,手術や放射線化学療法を組み合わせた治療が必要となる場合も多くなります。
齊藤
食道がんの放射線治療を長くやってきましたが、早期のケースは、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が一般的に行われるようになってきており、症例によって、リンパ節に対する予防照射などを行う場合が多くなってきています。EMRのできない患者さんで、手術もできないかあるいは手術をしたくない患者さんに放射線治療を行っています。また、進行がんで手術ができない患者さんに対しても放射線治療を行っています。
最も問題になるのは、その中間のケースです。一般的には、手術が最優先ですが、症例によっては、化学療法と放射線療法の併用で、よく効く患者さんもあり、カンファレンスで取り組むべき問題と思われます。抗がん剤も有効なものがでてきており、放射線治療も病巣部にできるだけ限局してあてられるようになってきたので、治療成績は向上しています。それと最近は、再発がんに対して放射線治療を行う場合が増えてきています。

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早期がんから進行がんまで、手術実績は豊富

これからの診断・治療は内視鏡が主流に

これからの診断・治療は内視鏡が主流に

川島
胃がんは、内科と外科ともに紹介されてきますので、外来で検査診断後、内視鏡治療、抗がん剤治療あるいは手術治療するのか、内科外科連携しながら決定します。外科では胃がん切除手術が年間190例程,その他の症状緩和、バイパス手術などがあり、200件以上こなしています。
腹腔鏡を用いた低侵襲手術については、まだまだ少ないですが、早期胃がんにおける機能温存を目指した幽門保存胃切除、および当センターでは胃上部がんに対して神経温存、噴門側胃切除も行い、合計で年間にだいたい20例くらい行っています。
進行がんについては、治療成績の悪いものに対して、臨床試験のかたちですが消化器内科と連携して、手術前に抗がん剤治療を行って腫瘍や転移病巣を小さくして手術を行っています。
山口
その点について、胃がんの場合は発見した時点で再発率は運命的に決まっているものなんです。化学療法が介入するのは、その決まっている再発率をなんとかあげないようにするためです。
以前は今とは違って、抗がん剤にあまり力がなかったため、こうしたカンファレンスを行っても手術についての患者紹介しかしていなかったわけですが、現在ではステージによっては手術だけでは効果不十分であったりしますし、再発率の高い進行度の胃がんについて、化学療法を術前に行うか術後に行うか、放射線療法どうするかといったことがテーマになっています。それによって治癒率が上がっていくわけですから、合同カンファレンスはとても重要なのです。
西村
大腸がんの手術は年間200例程度行っています。特に力を入れているのは下部直腸がんで、ほぼ温存手術を行っています。つまりがんセンターでは永久人工肛門の手術はほとんど行っていません。
内肛門括約筋切除. (ISR)という肛門を残す手術は70-80例行っていて、これは日本でもかなり症例数の多い方だと思います。
それから大腸がんは他のがんに比べると比較的治癒率がよいのですが、他の病院では敬遠して切除しないような再発がんでもうちでは切除するようにしています。それによって治るケースも出てきています。
低侵襲腫瘍開腹手術は年間30-40例くらいやっています。

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肝がん・転移性肝がん(大腸がん 肝転移)…不可能を可能にした併用療法の威力

坂本
肝切除はここ数年年間100例弱です。肝胆膵領域のがんは進行がんとして見つかることが多いですが、肝細胞がん、転移性肝がんはきちんとフォローすることで比較的早期に発見されることが少なくありません。肝細胞がんは大きさや場所によりますがTAE、ラジオ波による治療と手術を組み合わせて治療を行っています。時間、空間的に多発することの多いがんですから、両方の治療を行うことが多くなります。
消化器がんは基本的に完全切除が出来なければ治りません。以前大腸がん肝転移は手術の力が及びにくいがんでしたが、ここ10~20年くらいで手術治療によりかなり直るようになってきました。さらに肝切除の技術が進歩し、切除可能対象が拡がりました。近年では切除不能の転移性肝がんを抗がん剤治療で縮小し、切除可能となる事例が増えてきました。そこには抗がん剤の役割が非常に大きいと思います。化学療法でがんを縮小してこれまで切ることができなかったようながんを切除できるようになったわけですから。この意味で内科と外科の情報交換、連携、治療の受け渡しのタイミングがとても重要となります。世界的にみてもまだ確立された方法ではありませんが、われわれとしてはさきがけとなるべく、切除できるものは切るようにしていきたいと思っています。
胆道、膵臓がんは年間50~60例の切除です。エビデンスが出てきましたから、補助化学療法が標準となってきています。当然これも内科との連携です。
山口
抗がん剤治療は、投与法と新しい薬剤の発展によって目まぐるしく進歩しています。
変化が大きい領域なので、抗がん剤を適切に使いこなすためには新しい情報を積極的に収集することが大切です。抗がん剤治療は情報戦なのです。そのためには自分たちで新規治療開発を行う部分と、海外で開発されたもの導入する2つのルートがあります。このキャンサーボードで新しい情報をみんなの知識として共有し、患者さんに医療として提供しています。
その顕著な変化の事例が、これまであきらめるしかなかった大腸がんの肝転移のケースです。化学療法によってがんを縮小することによりメスを入れて取り切ることができるようになりました。これは外科と内科の共同作業です。
今や、チーム医療が出来ない医療機関ではがんを治療してはいけない時代になっていると思います。胃がんでも補助化学療法の効果は臨床試験的にも証明されています。食道がんでも術前の化学療法の必要性が証明されています。大腸がんも膵がんも同様で、術後補助化学療法の重要性が確立されています。 肝臓がんだけがまだ確立されていません。背景に肝硬変があるために再発することが多いので、がん治療だけでなく肝硬変のマネジメントが必要で、外科手術だけでは医療は終わらない領域です。
したがって、多くの診療科による共同作業ががん治療にはどうしても必要になってくるわけです。

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